2018年アニメ

大作のリメイク『銀河英雄伝説 Die Neue These』が不評だった理由

実は、私は大の『銀雄伝(ぎんゆうでん)』ファンです!

と、言っても原作小説からではなく、ゲームきっかけでOVA(俗に言う石黒版(1988-))を見始めたのですが……

それにしても、OVAをレンタル店で借りたときは、本伝110話、外伝54話、劇場版3話…… と、かなりの話数で「これは長くなるぞ!」と思っていたのですが、いざ第1話を見始めると夜な夜な一気に視聴し、毎日のようにレンタルショップに通ったものです。

インターネット配信なんて、まだない時代ですからね(笑)

まぁ、それほどに魅力的な作品なのですが、そんな超大作のリメイクと言うことで、私をはじめファンは放送開始前から悲喜こもごも。いざ2018年のリメイク版『銀河英雄伝説 Die Neue These 邂逅』が放送されると、案の定、ネットが荒れました。

余談ですが、邂逅(かいこう)とは「めぐりあい」と言う意味があるそうですよ。

ただ、色々なサイトや書き込みを縦覧していくと、残念ながら全体としての評価は『あまりよくない(60点)』と言った感じでしょうか? 

もちろん、『銀河英雄伝説』に限らず、アニメが実写化されたり、実写映画がハリウッド化されたりすると、それらを忌避するファンがアンチユーザーにまわることも多々ありますので判断は微妙なんですが、配信サイト『Amazonビデオ』での評価も3.2点(5点満点)と冴えない結果に終わっています。

2019年には続編となる劇場版『銀河英雄伝説 Die Neue These 星乱』の上映が予定されていますが「大丈夫なの?」と心配する声もありますので、今回はここまで雲行きが怪しくなった理由(=不評)について分析していこうと思います。

「声優陣のパワーダウン」は自明

まず、1988年の石黒版の最大の特徴と言えば、真っ先に思いつくのが豪華な声優陣ではないでしょうか?

別名、『銀河”声優”伝説』なんて呼ばれたりもしますし、「声優が豪華なアニメベスト10」をやったら1位間違いないです。

なんと言っても、ラインハルト・フォン・ローエングラム役の堀川りょうさんや、ヤン・ウェンリー役の富山敬さんをはじめ、潘恵子さん(グリューネワルト伯爵夫人アンネローゼ)、森功至さん(ウォルフガング・ミッターマイヤー)、若本規夫さん(オスカー・フォン・ロイエンタール)、速水奨さん(アーダルベルト・フォン・ファーレンハイト)、榊原良子さん(フレデリカ・グリーンヒル)、三石琴乃さん(カーテローゼ・フォン・クロイツェル)、石塚運昇さん(ヨブ・トリューニヒト)、小林清志さん(アドリアン・ルビンスキー)と、書き切れませんが、現代のアニメでゲストとして呼ばれる大御所の方々が脇役を固めていますからね。

このあたりは制作委員会方式の現在の制作費事情と、手探りの通信販売で成功を収めた石黒版OVAの制作費事情と異なりますので、一概に評価するのは難しい部分がありますが、映画やドラマ同様、脇役までしっかりとしたキャストで固めようとするとそれなりの制作費が掛かると言う証左なのかもしれません。

あとは、石黒版で出演された声優さんが、そのままの役を引き継げば話題はあったのかもしれませんが、大きな話題になったのは、石黒版でヨブ・トリューニヒトを演じた石塚運昇さんが、ウィリバルト・ヨアヒム・フォン・メルカッツ(石黒版CV:納谷悟朗さん)として出演されたことくらいでしょうか。

他には、パウル・フォン・オーベルシュタイン役の諏訪部順一さん(石黒版CV:塩沢兼人さん)や、アンドリュー・フォーク役の神谷浩史さん(石黒版CV:古谷徹さん)が登場したときに「石黒版の演技を意識されていたかな」と言った感想がネットで多く出回るくらいだったと思います。

正直、キャスティングに関する懸念はリメイクが発表されたときから予想できていたことなので、ラインハルト役の宮野真守さんや、キルヒアイス役の梅原裕一郎など現在の実力派さんがキャスティングされても、このあたりは仕方ないと言えるでしょう。

1クールで納めるには無理がある

声優陣に関しては前述の通り劣勢となることが予想できたわけですが、それを差し引いても低評価なのはなぜでしょう?

ヒントはOVA版のプロデューサーを務められた田原正利氏の記事にあると言えるでしょう。

そもそも『銀英伝』のアニメ化はTVシリーズを想定していました。それはあれだけの長い原作を映像化する媒体として、当時はTVシリーズしかなかったなかったのですから当然のことでした。(少なくとも同時期の某作品のように全10巻ある作品を90分にまとめるような蛮勇は私にはありません)

(アニメ『銀河英雄伝説』プロデューサー 田原正聖(正利))

ファンの方なら記事の意味がおわかりですよね。

今回『銀河英雄伝説 Die Neue These』の最終回(第12話)となった「アムリッツァ会戦(前哨戦)」は、石黒版での第15話にあたります。つまり、単純な話数計算で言うと石黒版から2割程度カットされているわけです。

実際のところ、原作の小説ファンの間では「石黒版も省略しすぎ」との声が一部であるようですが、110話にも及んだ石黒版からさらに削ってしまっては、内容が薄まるのは当然と言えます。

結果、銀河英雄伝説の魅力である「キャラクターの人生(個々のストーリー)」や「1400年にも渡り設定された銀河系の歴史」が蔑ろになってしまった印象がぬぐいきれないわけです。

例えば、第8話の「カストロプ動乱」。

石黒版では、動乱を鎮圧するために首謀者を降伏させる作戦(犠牲者を少なくする)を立案するキルヒアイスに対し、当初は軽んじる態度を見せていたベルゲングリューン。しかし、その指揮ぶりに感化される様子が細かく描写されていましたが、本作ではほぼ省略。

加えて、その優しさ故にリップシュタット戦役で倒れるキルヒアイスですが、本作では赤毛の天然パーマや、下級兵士にも敬語で接する部分は陰を潜め、髪の色が異ならなければ「どっちがラインハルト?」と見間違えてしまうほど威厳のある上官として描かれてしまいました。

同様に、不良中年でおなじみのワルター・フォン・シェーンコップが好中年(?)になり、好青年のブルームハルトが髭面のおじさんに変貌するなど、こういったキャラクターデザインや設定で離脱したファンも多かったように思います。

まぁ、フレデリカ・グリーンヒルが美人キャラに変貌したのは、女性キャラが少ない銀河英雄伝説ではアリかもしれませんね(笑)

クラシックは偉大だった

アニメ以外にもゲーム化されている本作でおなじみの曲と言えばラベル作曲のボレロです。

この曲が聞こえてくると「左翼艦隊、前進せよ」と言うミュッケベルガーのセリフが脳裏を過ぎりますが、石黒版ではボレロの他、多くのクラシックが艦隊戦で使用されています。

当時、クラシックコンサートで演奏されることの少なかった、ニールセン作曲の交響曲第4番が「アムリッツァ会戦(石黒版)」で使用され、コンサートで演奏されるようになったのは有名な話です。

アニメと言うとファンタジー(フィクション)要素が強いのですが、全編にわたりクラシックを使用したことによって、本作にリアリティが加わるとともに、歴史感が身近なものになったと推測します。

そう考えると、クラシックからオリジナル音楽に転換したことによって、他のSFファンタジーアニメと同列になってしまったように感じます。せめて、音楽だけでもクラシックなら、ゲームファンや石黒版のファンをつなぎ止めれたかもしれません。

まとめ

今回のリメイクにあたり、アッテンボローが序盤から登場しないなど、原作を大切にしつつ、石黒版とは全く異なる側面(キャラクターデザイン・音楽など)から製作しようとしたのは理解できます。

また、原作小説・ゲーム・パチンコなど銀河英雄伝説の入口は様々ですが、どうしても石黒版が脳裏に焼き付いているため、比較されるのも仕方ないことだと思います。

しかし、クオリティの高い映像によって、銀河英雄伝説の魅力である個々のキャラクターや歴史の描写に深みが増すかと思いきや、広く浅くで終わってしまい、イケメンや美人になったキャラクター、艦隊描写のグラフィックなどビジュアル面で誤魔化された側面が否めません。

トドメは、最終回がアムリッツァ会戦の”前哨戦”と言う、中途半端なところで幕を下ろし「続きのアムリッツァ会戦は、ぜひ劇場版へ!」のような大人の事情が見え見えである点には、多くのファンが落胆したと思いますし、リメイクから見だしたユーザーは「えっ!? これで終わり?」の状態だと思います。

冒頭にも紹介しましたが、Amazonビデオをはじめ各方面からの評価が微妙となると、まだまだ、スタートしたばかりですが、長い原作の最終回までリメイクがたどり着くことができるのか率直な疑問が過ぎります。

(C)田中芳樹・徳間書店・徳間ジャパンコミュニケーションズ・らいとすたっふ・サントリー (C)田中芳樹/松竹・Production I.G

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