2000年から放送が開始し、足かけ10年(全193話)で完結した高橋留美子原作の『犬夜叉』
2017年春には、ゴールデンボンバーの喜矢武豊さん演ずる舞台が公演されるなど「るーみっくわーるど」を代表する作品ですよね。
今日は、そんな犬夜叉のキーワードとなる悲恋の巫女『桔梗』について、ストーリーと共に「本当に幸せになることができたのか?」と言う視点で考えてみようと思います。
あらすじ
まずは、物語をおさらいしてみまよう。

舞台は戦国時代。妖怪の妖力を高めると言われる「四魂の玉(しこんのたま)」。
この四魂の玉を妖怪や汚れた心を持つ人間から守る巫女の「桔梗」は、ある日、半妖(人間と妖怪のハーフ)で同じく四魂の玉を狙う「犬夜叉」と出会います。
当初、桔梗から四魂の玉を奪おうと考えていた犬夜叉でしたが、数多の妖怪からたった一人で四魂の玉を守る桔梗の姿に徐々に惹かれ行動を共にしていきます。

そして、年月を経て二人は相思相愛の関係に発展し、桔梗は犬夜叉に「四魂の玉の力を使って人間にならないか」と提案します。
清い心の持ち主の願いであれば四魂の玉は浄化され消滅し、玉を守る使命から解放される桔梗は一人の女となり、人間となった犬夜叉と結ばれるはずでした。
しかし、約束の日。
四魂の玉と桔梗を我が物にしようと企む「奈落(ならく)」の罠によって、桔梗は犬夜叉から深い傷を追わさせ、犬夜叉は封印の矢によって桔梗に封印されてしまいます。


桔梗は死の間際、「自分の亡骸と共に四魂の玉を燃やせ」と妹の楓に託し四魂の玉は消滅したはずだったのですが、500年後、転生した「日暮かごめ(ひぐらし かごめ)」の体内から四魂の玉の輝きが…
そして、かごめは妖怪によって神社にある井戸(祠)に引きずり込まれ、戦国時代にタイムスリップし再び四魂の玉をめぐる争いが始まります。
…と、このようなかたちで物語がはじまるのですが、相思相愛だった桔梗が犬夜叉の手に掛かり絶命してしまうのは『悲恋』としか言いようがありません。
恐らく「悲恋キャラクターランキング」をやったら上位間違いないでしょう。
この世に蘇った桔梗
さて、かごめの力によって50年ぶりに封印が解かれた犬夜叉の前に、骨と墓土によって蘇った桔梗が現れます。

このとき、自分の死の真相(犬夜叉が裏切ったわけではなく奈落の罠によって殺された)を知った桔梗ですが、「死人である私は犬夜叉と結ばれることはない」と言うことも悟り孤高の旅に出ます。
気丈に振る舞う様子とは裏腹に叶わぬ想いを心に秘める桔梗の姿はなんとも切ないですね。
完結編第8話通称「神回」
その後、完結編第8話(通算175話)「星々きらめきの間に」まで度々登場する桔梗ですが、最期は奈落の瘴気(毒気)によって体を蝕まれ犬夜叉に看取られながら成仏します。

2000年秋に始まったアニメ犬夜叉ですが、桔梗と永遠に別れるシーンが放送されたのは2009年秋。
「やっと、ただの女になれた…」と口づけを交すシーンを浜崎あゆみの『Dearest(親愛なる人)』のアコースティックで奏でられたときは涙腺崩壊でしたね。
個人的に「この選曲、反則ですよ」って感じの神回です!

悲劇のヒロインとも言える桔梗でしたが「最期、笑顔で成仏できたのは救いだったのかな」とも思います。
実際、高橋留美子先生も雑誌の対談で「いずれ死ななきゃいけないキャラ」と話していたそうですが、そう考えると一番綺麗な最期だったように感じますね。
桔梗と犬夜叉は幸せに暮らすことができたのか?
ちょっと前置きが長くなりましたが、ここからが本題の「桔梗は本当に幸せになることができたのか?」と言う点です。
いきなり答えになりますが残念ながら『ない』でしょうね。
桔梗と犬夜叉がハッピーエンドになるための分岐点は『約束の日』にあると言えます。
約束の日。つまり、四魂の玉を使って犬夜叉が人間になる日です。
本編では奈落の罠に落ちた二人でしたが、「もし、四魂の玉を使って犬夜叉が人間になり桔梗と結ばれたら…」どうだったでしょう。
まず、犬夜叉が人間になるとこれまで持っていた妖怪としての力は当然ながら失ってしまいます。また、桔梗も「私は四魂の玉を守る者。玉がなくなればただの女になる」と巫女を引退することを示唆していました。
仮に引退とはいかないまでも犬夜叉に恋心を抱いたことにより桔梗の霊力は低下の一途を辿っていましたから、強力な妖怪を撃退するほどの力は無くなるのではないかと予想します。
もし、二人が結ばれても戦国時代の妖怪は存在したままですし、犬夜叉にしても桔梗にしても他の妖怪から狙われる(復讐)可能性があるなかで、妖力や霊力を持たずに過ごしていくのは無謀とも言えます。
そうなると「犬夜叉が人間になっても二人が幸せに暮らしていけるかは疑問」というのが個人的な結論です。

犬夜叉からもらった品で桔梗が紅をさすシーン(第147話)ですが、このように幸せを感じる日々が続くのは難しかったのでは…
もちろん、「犬夜叉と桔梗が結ばれない」という悲劇が作品としての根幹にあるわけなので、このような仮説を考えること自体がナンセンスなのですが、やっぱり読者・視聴者としては「桔梗とのハッピーエンドも見たい」と思ってしまうのが心情ですよね。
最後に、舞台での桔梗役は乃木坂46の伊藤純奈さんが演じられます。桔梗の年齢は18歳と言われていますが、年齢的にも同じ世代の伊藤純奈さんの演技にも期待が集まりますね。
(C)高橋留美子/小学館・読売テレビ・サンライズ 2000